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キム・ギトクの「アリラン」にはやられました!

木曜の夜から熊谷に戻ってきました。
金曜日、夫はまた友人たちとゴルフがあるので6時前に栃木に向かって
出発しました。
天気予報も良いほうにはずれて雨の心配はなさそう。
今日もまたゴルフは1.5ラウンド回るそうです!
ご苦労様です。

1.5ラウンドに昼飯付なのに平日だから6000円とすごく安い!
だから夫のゴルフはもっぱら金曜なんです。

私は今日は高崎にある「シネマテーク高崎」という映画館に行ってきました。
高崎までは熊谷から電車で45分くらいと比較的近いので東京まで出るより
便利です。
それにこの映画館で上映する作品のラインナップがすごいのです。
今日は続けて2本見てきました。

若松孝二監督の「11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち」と
キム・ギトクの「アリラン」です。
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「アリラン」
★★★★
思えば私が最初に出会った韓国映画がキム・ギトクの作品だったと思います。
「悪い男」「サマリア」「うつせみ」「春夏秋冬そして春」・・・
彼の作品はどれもセリフが少ないのですが映像が本当に美しいのです。
ギトクワールドにはまってしまうのです。

ほとんどのキム・ギトク作品は見ていますが2008年のオダギリ・ジョー
イ・ナヨン主演の「悲夢」以来映画を撮らなくなってしまった彼の久々の作品
なので楽しみでもあり期待を裏切られたらどうしようという複雑な思いもありました。
ストーリーは
山間の町外れにある粗末な家。
その中にテントを張り、一匹の猫と暮らしている男がいる。身なりもみすぼらしく、
マキで煮炊きをしている。男の名はキム・ギドク。世界的に名を知られた映画監督だ。
やがてギドクはカメラに向かって語り出す。撮影中に起きた事故によるショック。
そして映画仲間の裏切り。様々な事が重なり、この3年間映画を撮れなくなったと。
そこにもう一人のギドクが現れ、質問をギドク自身に投げかける。

1時間半と短い作品を見ての率直な感想は
「やられた!!」って感じです。

始まってしばらくは彼の自給自足のような隠遁生活の様子をカメラが静かに
追っていきます。

長く伸びた髪、洗濯もしていないようなシャツとズボン、ひび割れたようなかかと。
家の中にはマキ割りストーブと寒さをしのぐためのテントがあって、トイレは
外で穴を掘って済ます。ストーブの上で栗やかぼちゃを焼いて食べ、熟した
柿をうまそうに食べる。焼酎を飲み、雪をストーブの上の鍋で溶かしてラーメンを
食べたり、電気は来ているので炊飯器でご飯を炊いてキムチと一緒にかきこむ。

その大せいな食欲は映画を撮れないでいる彼の有り余ったエネルギーを感じさせました。
そんな中で奇妙にも自分でエスプレッソを入れる機械を作ったりしている彼。
そしてカメラ2台を回して自分を撮っていきます。
途中からはもうひとりの自分と語り合い、「アリラン」の歌を慟哭のように歌い続け
時には泣くのです。

最後、拳銃を組み立て彼は車を運転して街へ出て行く。
パーン、パーン、パーン。
何を撃ちに行ったのかは分からないのですが、てっきり映画を撮れないでいる
キム・ギトク自身を見つめるドキュメンタリーかとおもいきやだまされました!
ちゃんと演技していたんですね。

やられました!なんかうれしいです!

時折彼の今までの作品たち、「コーストガード」や「受取人不明」「春夏秋冬そして春」
などが映し出されると早くキム・ギトクの次の作品が待ち遠しくなってくるのです。
そして今でも彼の歌う「アリラン」が耳に残っています。
by zac90109 | 2012-06-30 15:40 | 映画