「さよなら、渓谷」深い余韻が残ります。

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★★★★★
予告編を見たとき、「映画ファンが好きそうな作品だな」って思っていたら
先ごろモスクワ国際映画祭の審査員特別賞を受賞したというニュースが
飛び込んできて、残念ながら熊谷では上映していないので浦和で見てきました。

地味だけどなかなかいい映画でした。
映画祭での受賞は納得です!
余韻が残って誰かと語り合いたくなる作品でした。

ストーリーは
都会の喧騒から離れた緑が覆う渓谷で、幼児が殺害され実母が犯人として逮捕される
ショッキングな事件が起こる。
母親の逮捕により事件は解決したかに見えたが、一件の通報により、この渓谷に住む
尾崎俊介(大西信満)がこの母親と不倫関係にあったことがわかり、俊介に共犯の疑いが
かけられる。
通報したのは俊介の妻・かなこ(真木よう子)であった。取材に当たっていた週刊誌記者の渡辺
(大森南朋)は、かなこが俊介を告発したこと、二人が必要最低限の物しか持たず、
まるで何かから隠れているかのような生活をしていることにひっかかりを感じる。
調べていくうちに、渡辺は二人を結びつけている15年前の罪に行きつく……。

セリフも少なく饒舌なストーリー展開ではないので、時には加害者である大西信満演じる尾崎さんに、時には真木よう子演じる被害者のかなこさんの立場にたって見ているうちにぐいぐい引き込まれてしまいました。
加害者と被害者が一緒に暮らすってことがありえない、設定に無理があると思っていた
のですが私もその場にいるような気持ちにさせられて、いつの間にかそんなことは忘れて
しまいました。

事件の後の人生に絶望した彼女。そのことを偶然知った尾崎。
加害者は彼だけじゃないのに、尾崎は逃げようとすれば出来たかもしれないのに
彼女の前から逃げなくて罪を償おうとする。
彼女の人生を台無しにしたはずなのに彼の誠実さ?に胸が苦しくなります。

かなこさんが言います
「私が死んであんたが幸せになったらダメだし、あんたが死んで楽になるのもダメ」
かなこさんの気持ちよく分かります。

「ついてこないで・・・」と言ってあてどもなく歩き続ける彼女の後を彼は少し間隔をおいて
ずっとついて行く長いシーン。
そして歩道橋から何度も身を乗り出して飛び降りよう?とする仕草の合間に
「ついてこないで」と言ったはずの彼の姿を探すかなこ・・・
この二つのシーン。憎いはずの尾崎なのにそれでも傍にいて欲しいのか、
揺れ動くかなこの気持ちが真木よう子の演技から伝わってきて秀逸です。

かなこと尾崎の激しいベッドシーンは激しければ激しいほど切なくなります。
そこには愛なのか憎しみなのか、それとも相憐れむ気持ちなのか・・・
もしかしてこの時間だけは何も考えなくていいという二人にとっての安らぎの
時間なのか・・・
そんなことまで見ているものに考えさせる濃厚で必要不可欠なベッドシーンです。

普通は幸せになるために男と女は一緒にいるのにね・・・
悲しいね、切ないね・・・

真木よう子さんはそんなに演技がうまい女優さんだとは思っていなかったのですが
彼女の持ち味を生かしたいい作品に出会えてよかったですね。

尾崎を演じた大西信満さんは「実録、浅間山荘・・・」「キャタピラー」など若松孝二
監督作品に多く出ていた俳優さんですが目がいいですね。
だけどスーツが似合わないなぁ~

この作品で惜しむらくはラストシーンで大森南朋演じる週刊誌記者、渡辺が尾崎に
問いかけるセリフです。
あれはなかったほうがいいと思いますが。
あのセリフで映画を見終わったあと、確かに語りあいたくなることは間違いないとは
思うのですがちょっととってつけたようで余計なお世話ですよね・・・

それからね、かなこさん。
不幸な過去は結婚相手には絶対に話さないほうがいいですよ。
誰も幸せにはなれないのですから・・・
男と女が一緒に住むって幸せになるためなのです。

ちなみにこの作品の大森監督は大森南朋のお兄さんなんですよね。
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by zac90109 | 2013-07-03 10:20 | 映画