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「そこのみにて光り輝く」温かくて優しい作品でした。

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★★★★
ストーリーは
ある出来事をきっかけに仕事を辞め、あてもなくただふらふらとしていた達夫(綾野剛)は、
パチンコ屋で拓児という青年(菅田将暉)に使い捨てライターをあげたことをきっかけに知り合う。荒っぽいところがあるが人懐っこい拓児は、達夫を家に呼ぶ。
拓児の家は、サムライ部落の中でも取り残されたようなかろうじて建っているバラックだった。
そこには寝たきりの父親と、父親の世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。
達夫と千夏はそれぞれの身の上を話すうちに、惹かれあっていく。
一家を支えるために辛い仕事もする千夏に、不器用ながら一途に愛を注ぐ達夫。
そんな中、ある事件が起こる……。

山の仕事の事故で仲間を死なせてしまった達夫(綾野剛)はそれ以降仕事も辞め
酒とパチンコに明け暮れ自堕落な生活を送っているような男だが、彼が出会った
千夏(池脇千鶴)はもっと過酷な生活を送っていました。
脳梗塞で倒れた父と何もしない母。そして前科者の弟を抱え昼は海産物の工場で働き
夜は体を売って家族を支えている。

男は女々しくて女はたくましい!

そんな2人が出会ってすぐに惹かれあって海の中でのラブシーン。
このシーン好きです。
達夫は沖のほうから千夏に寄っていき、千夏は浜のほうから達夫に寄っていき
海の中での抱擁となります。
2人が磁石のように自然に惹かれあっていくステキなシーンです。

そしてこの作品全体を覆ってしまうような一歩間違うと暗いだけの話に
軽やかなリズムと躍動感を与えてくれたのが千夏の弟、拓児を演じた菅田将暉君!
ちょっと粗野だけど草花をいつくしむ姿は心優しい青年で、その憎めない青年を
彼は見事に演じていて、「共喰い」の時もよかったけれど「そこのみにて光り輝く」
ではまた違う魅力的な一面を見せてもらいました。
今までのところ私の中で彼が今年の助演男優賞候補だと思います。

セリフはほとんどなくて表情でいい演技をした綾野剛も良かったし、あの「ジョゼと
虎と魚たち」での彼女が忘れられない池脇千鶴の体を張った演技に圧倒されました。

もう少しでささやかな幸せが届くところに来ていたのにある事件が起きて又もそれは
シャボン玉のように消えうせようとしていた。
それでも今度は違った。
達夫は事件を起こした拓児を兄のように優しく抱きしめ交番の前まで送っていく。
ラスト、達夫と千夏の2人の立ち尽くす場所には暖かい日差しが当たっていて
守りたいものを見つけた、一緒に生きていく場所を手にしたというタイトル通り
「そこのみにて光り輝く」でした。

温かくて優しい作品でした。

ところで「そこのみにて光り輝く」の原作者は佐藤泰志氏。
何度も芥川賞候補に挙げられながら賞に恵まれず、41歳で自らの命を絶った不遇の
作家だそうです。
同じく函館を舞台に書いた「海炭市叙景」も映画化されましたがこれも良い作品でした。
亡くなって数十年経って彼の作品も光り輝く場所にたどり着いたのでしょうか。
by zac90109 | 2014-06-24 10:08 | 映画