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心に響く「あん」

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★★★★
河瀬直美監督作品を初めて見ました。
海外の映画祭ではいろいろ受賞している作品もあるのですが、なんとなく
とっつきづらく今回の「あん」を初めて見ました。

ストーリーは
縁あってどら焼き屋「どら春」の雇われ店長として単調な日々をこなしていた千太郎
(永瀬正敏のもとに、ある日、求人募集の張り紙を見た徳江(樹木希林)がやってくる。
彼女の勢いにのまれどら焼きの粒あん作りを任せたところ、あんの味が評判となり
あっという間に店は大繁盛。
つぶれたどら焼きをもらいにくる女子中学生・ワカナもだんだんと徳江に馴染んでいく。
しかしかつて徳江がハンセン病患者だったことが広まり、客が一気に離れていった。
この状況に徳江は店を去り、千太郎やワカナの前から消えてしまう。
それぞれの思いを胸に、二人は徳江を探す……。

いい作品でした!
じ~んと来て心に響く作品でした。
樹木希林、永瀬正敏ら俳優陣も素晴らしかった!
樹木希林演じる元ハンセン病患者、徳江があずきを炊く描写が美しい!
雨に打たれ、風にさらされ、どんなふうに育ってきたか、そのあずきを
慈しむように優しく炊いていきます。徳江さんはその行為をあずきへの
「おもてなし」と言います。
ハンセン病患者として差別と偏見に満ちた人生を送ってきた徳江さんの
半生をまるで慈しむかのように・・・

でも徳江さんはそのことに対して愚痴ひとつ言いません。
あるがままの人生を受け入れているかのようです。

どら焼き屋の雇われ店長、千太郎を演じる永瀬正敏も暗い過去を背負った人間。
徳江の生き方に触れ少しずつ変わっていく彼。しかし徳江さんが元ハンセン病患者
だと知ると回りの人たちの反応が変わってきてしまう。
その代表格が浅田美代子演じるどら焼き屋のオーナーです。
徳江の素性を知り人前に出てもらってはダメのように言う。
彼女の登場で作品に少しリズムが出来る。
一見悪者のように映るが世間の目とはそういうものだろう。

そんな徳江さんを守りきれなかった千太郎は涙する。
ここで私も涙、涙・・・
無駄なセリフは極力排除され、観客はそれぞれの登場人物にじっくり
入り込んでいくことができる。
行間が美しい作品である。

樹木希林はまさに「徳江」になり、永瀬正敏は「千太郎」になり、そして
母親との間で孤独感を抱える少女ワカナを演じる樹木希林の孫も上手いとは
言いがたいが、その真っ直ぐな目は美しい。

河瀬監督は差別にさらされ続けてきたハンセン病患者のことを声高に叫ぶ
わけではなく、あるがままの自分の人生を受け入れ生きていくという生き方を
見せてくれたように思う。
by zac90109 | 2015-06-29 22:30 | 映画