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★★★★★
「アーティスト」でアカデミー賞作品賞、監督賞を受賞したミシェル・アザナヴィシウス
監督の作品です。
心揺さぶられるいい作品でした。
時代背景は第二次チェチェン紛争。
まずチェチェン紛争について知っておかなければと調べてみました。

「第一次チェチェン紛争」
1994年~1996年、ロシア連邦からの独立を目指すチェチェン共和国独立派武装勢力
とそれを阻止しようとするロシア連邦軍との間で発生した紛争。
5年間の停戦後

「第二次チェチェン紛争」
1999年~2009年、チェチェン独立派勢力とロシア人及びロシア連邦への残留を
希望するチェチェン共和国のチェチェン人勢力との間の紛争。
紛争は約10年続いた後、国家対テロ委員会は独立派の掃討が完了したとして
終結したそうです。
最後のほうでは国際社会から、独立派に対するプーチン政権への批判と、
独立派もアルカイダ等のテロ組織との関係を疑われる結果になったようです。
今もウクライナの問題で揺れるロシアですが、チェチェン紛争もわずか6年前に
終結したばかりの紛争なのです。

さて「あの日の声を探して」ですが、全編手持ちカメラでチェチェンに隣接する
グルジアでロケが行われたそうです。
全編手持ちカメラのせいか、まるでドキュメンタリー映画のような臨場感と
緊迫感がありました。

ストーリーは
1999年、ロシアに侵攻されるチェチェン。
両親を目の前で殺され、声を失った9歳の少年ハジ(アブドゥル・カリム・ママツイエフ)は、
姉のライッサ(ズクラ・ドゥイシュビリ)も殺されたと思い、まだ赤ん坊の弟を見知らぬ人の家の前に捨て、
一人放浪していた。子供さえも容赦なく攻撃してくるロシア軍をかわし、ようやく街へたどり着いたハジは、
フランスから調査に来たEU職員のキャロル(ベレニス・ベジョ)に拾われる。
仕事を人生の第一優先と考え、家庭も持たず、離れて暮らす母親のことも煩わしく感じていたキャロル
であったが、ハジと出会い、自分の手では世界を何も変えられないことを知る。
せめて目の前の小さな命を守りたいと願い始めたキャロルは、ハジが生き別れた姉弟を捜し出そうと
奔走するが……。

両親を殺され、声を失った9歳の少年ハジを演じた子はオーディションで選ばれた子
だとか。
生まれたばかりの弟を抱え、9歳ながらも必死で生きようとする少年の目が哀しくも
健気で胸を打ちます。

またそんなハジを拾って守ろうとするEU職員のキャロルを演じたベレニス・ベジョは
紛争で揺れるチェチェンの状況を報告書を何枚書いたところで自分の力では何も
変えられないと悩む役を好演している。

そして忘れてならないのはハジ達のような親を亡くした子供たちを育てる孤児院の
院長ヘレンを演じたアネット・ベニングの存在感です。
出ているシーンはそれほど多くはないのですが彼女のじっと見つめる眼差しの優しさ、
深い包容力のような演技は作品に厚みとリアリティを持たせ素晴らしいです。

そしてこの作品ではもう一つ、ちょっとした罪でロシア兵にされ最前線に送り込まれ
違う人生を歩んでしまうことになってしまった青年も描いています。
戦争は人の人生をいとも簡単に変えてしまうものなのです。
ウクライナに限らず今も世界中のどこかで戦争というか独立をかけた紛争が絶えず
起こっています。
そしてその紛争を難しく複雑にしているのがテロ組織の存在だと思います。
戦いのどちらが正義でどちらが悪なのか簡単では無くなってきているように思います。
ただ複雑に絡み合った紛争の中で、人々はそれらに翻弄されながらも光り指す方向
に向かって生きていくのでしょう。

心揺さぶられる本当にいい映画でした。
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# by zac90109 | 2015-08-06 00:19 | 映画

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★★★★
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品
アルゼンチンの映画はたぶん私の中では初めての作品です。
アルゼンチンの人々のユーモアとは?
興味があって見てきました。

ストーリーは
「スイッチ1 :おかえし」モデルの女が仕事で指定された飛行機に乗ると、
隣の席の男が彼女の元カレを知っていた。
さらに乗客全員が彼と関わりがあることが判明、しかもみんな彼にひどい仕打ちをしていた。
そしてCAの一言に機内は凍りつく……。
「スイッチ2:おもてなし」レストランで働くウェイトレス。
ある日、父親を自殺に追いやり、母親を誘惑した高利貸しの男が来店する。
恨みが再燃した彼女は、同僚が提案した殺鼠剤入りの料理を出すが、男はそれを食べても平気だ。
そこへ男の息子がやってきて意外な行動に出る……。

6つのオムニバス作品からなる映画ですが、日本人の笑いの感覚を超えて
ブラックユーモア満載といった内容でした。
ただ私は結構好きです!

特に3つ目の「エンスト」
1台のオンボロ車を「田舎者!」と抜き去った後に起こる悲劇は不謹慎ながら
喜劇のような展開で思わず「ありえそう~」と思った。

4つ目の「ヒーローになるために」
こちらも車がらみで、ちょっと止めただけの車がレッカー車に持っていかれ
挙句に仕事も家庭も失ってしまう男の怒りの先は・・・
笑えないオチではあるけれどちょっとスカッとしてしまう。

6つ目の「ハッピーウェディング」
結婚式に新郎の浮気相手が出席なんてありそうな話ですが、新婦の怒りの激しさ
といったら怖い、怖い!
なのにあの結末!
まるでジェットコースターのような喜怒哀楽!
日本人にはよく分からん・・・

でも初めてのアルゼンチン映画は面白かった。
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# by zac90109 | 2015-08-03 22:48 | 映画

塚本晋也監督の「野火」

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★★★
太平洋戦争末期、日本の敗戦も色濃くなった頃のフィリピン、レイテ島での
日本軍の敗残兵の彷徨いを描いた作品ですが、この作品の上映館は少ないようで
しかし私の行きつけのシネマテークたかさきでは観客の静かなる熱気に包まれて
いたように思われます。
安保法案に揺れる今の時代だからでしょう。

ストーリーは
第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。
日本軍の敗戦が色濃くなった中、田村一等兵(塚本晋也)は結核を患い、部隊を追い出されて
野戦病院行きを余儀なくされる。
だが負傷兵だらけで食料も困窮、少ない食料しか持ち合わせていない田村は早々に追い出され、
再び戻った部隊からも入隊を拒否される。
行き場を失い、果てしない原野を一人彷徨う田村。
空腹と孤独、そして容赦なく照りつける太陽の熱さと戦いながら彼が目撃したものは、
想像を絶する地獄絵図であった……。

戦争末期、レイテ島では武器や食料の補充も無く、多くの兵隊たちは敵と戦って
命を落とすというよりも病死や餓死で亡くなっていったと聞きます。
原作者、大岡昇平自身もレイテ島で捕虜となり、この「野火」を書かれたそうです。
1959年に市川昆監督が船越英二主演で一度映画化がされています。
私もユーキャン発行の「太平洋戦争」全10巻で何故この戦争が始まったのか
改めて知ることになりました。

塚本晋也監督の「野火」
ここまで描くか!!
戦争とはこういうものなんだと・・・
もはや敵と戦うのではなく、飢えとの戦い。己との戦いとはなんともすさまじいが
今の私には想像も出来ない。
そこに信仰心があったとしても、飢えを満たすために人は「生きたい!」という
本能を押さえられないのではないか。
私の中では反戦映画というよりも極限状態に置かれた時の人間の生きたいという
「生への執着」を感じました。
それが後に自分を苦しめることになるということが動物と違って「良心や理性を持つ人間」
という生き物の宿命なのでしょう。

こういう作品に映画としての出来、けちをつけるのはちょっとはばかられるのですが
主演を演じた塚本晋也が結核という病気設定にも関わらず、セキをしていたのは
最初だけ、そして最後まで痩せこけてもいなくて作品自体の緊張感を失ってしまった。
血や肉が飛び散る戦闘シーンも私には「お化け屋敷」的な驚かせる演出ばかり
目だってがっかりです。
役者って大事です!
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# by zac90109 | 2015-07-31 13:01 | 映画

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★★★★
2009年版「このミステリーがすごい!」海外編第一位受賞作品の映画化
と聞けばミステリー好きな私としては放っておけない作品です。

ストーリーは
1953年、スターリン独裁政権下にあったソビエト連邦で、9歳から14歳の子供たちの
変死体が次々に見つかった。
死体は一様に全裸で胃が摘出されており、さらに山間部であるのに溺死していると
不審な点が多かったものの、理想国家を掲げる体制のもと犯罪は存在しないとされていたため、
事故として扱われた。
親友の息子が死に、秘密警察MGBの捜査官レオ(トム・ハーディ)は真相を追いはじめるが、
国家の妨害に遭い妻(ノオミ・ラパス)には不当にスパイの嫌疑がかけられる……。

正直、見終わって直後は「ん~~・・・」という印象でした。
理由は「ソロモンの偽証 後編」の時と同じく「犯人は誰!?」
というミステリー要素が薄かった為だと思われる。

1950年代のスターリン政権下で起きた連続殺人事件の犯人探しというよりも
「殺人は資本主義の病」と言い切り、犯罪さえも無かった。それは事故だった。
と真実を歪めてしまう、さらには家族さえもスパイ容疑にかけてしまう。
そんなスターリン政権下のソ連には身震いしてしまうほど恐ろしい!

そしてそんな中、孤児として育ちMGB(秘密警察)となったレオ(トム・ハーディ)
とその妻ライーサ(ノオミ・ラパス)の夫婦の関係性にも変化が起きてくる。
そんな夫婦の関係性の変化が見所のひとつだろうか・・・
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# by zac90109 | 2015-07-17 13:57 | 映画

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★★★
主演のジュリアン・ムーアがアカデミー賞主演女優賞を受賞した作品
なので見てきました。
平日午後の回でしたが結構満席状態でした。
若年性アルツハイマーと診断された女性がどう生きるのか?
かつて渡辺謙が主演を演じた「明日の記憶」もそうでしたが、アルツハイマー病は
誰もが人ごととは思わず観客を引き付ける題材のようです。

ストーリーは
ニューヨークのコロンビア大学で教鞭をふるう50歳の言語学者アリス(ジュリアン・ムーア)は、
キャリアを積み学生たちから慕われる一方、家族にも恵まれ、まさに円熟期を迎えていた。
しかし物忘れが顕著に現れるようになったため受診したところ、若年性アルツハイマー病だと診断される。日々記憶が失われる中、アリスは懸命に自分の運命と戦っていく。

言語学者という人一倍頭を使う職業であるはずのアリスがジョギング中、
自分の居場所が分からなくなるという恐怖!
そして自分の家の中のトイレが分からなくなるという恐怖!
何もかもが分からなくなるのではなく、分からなくなるという恐怖を感じとった
ことの恐怖とは本当に怖いと思う。

「癌だったら良かったのに・・・アルツハイマーは恥ずかしい・・・」とアリスは言う。
誤解を恐れずに私は思う・・・
癌、もしくは他の病気だったら自分の頭でどういう治療を受けようとか
病気の進行に応じて自分の頭で考えることも出来るかもしれない。
しかしアルツハイマーだと自分のことなのに他人に決めてもらうことになる
のかもしれない。
そしてそれ以上に生まれてからずっと積み上げてきた思い出や、紡いできた人間関係。
それらを失ってしまうことの恐怖はいかばかりか・・・

ジュリアン・ムーアの演技は主演女優賞に値するものだったと思うが、アリスを
取り巻く家族たちもみんな優しくてちょっと綺麗に描かれすぎていて、感動とか
心に響いてくるものは無かった。
「博士と彼女のセオリー」で難病ALSを患ったスティーヴン・ホーキング博士を
演じてアカデミー賞主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインもそうだったが
難病患者を演じることって俳優にはちょっとお得なことのように思える。
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# by zac90109 | 2015-07-05 15:34 | 映画